統計に「年齢別の賃金」はどこまで写るのか
デザイナーの年齢別賃金を知りたい、という関心は自然なものです。ただ、職業情報として公開されている賃金データは、職種区分ごとの平均値という形で提供されています。手元の素材に含まれているのは、職種区分ごとの月額給与・年間賞与(いずれも千円単位)と、その区分に対応する「平均年齢」です。
つまり「20代はいくら、40代はいくら」という刻みの数字はここにはありません。代わりにできるのは、平均年齢の違う職種区分を横に並べて、年齢の重心が違う仕事の賃金水準がどう違うかを読むことです。以下はすべて2023年調査の値です。
平均年齢と賃金を並べてみる
| 職種区分 | 平均年齢 | 月額給与(千円) | 年間賞与(千円) |
|---|---|---|---|
| 音楽家,舞台芸術家 | 38.4 | 408.0 | 842.3 |
| 美術家,写真家,映像撮影者 | 38.3 | 371.5 | 754.4 |
| 車掌 | 38.0 | 367.2 | 1200.9 |
| デザイナー | 38.8 | 363.8 | 727.5 |
| 総合事務員 | 44.2 | 341.7 | 1008.5 |
| 電気機械器具組立従事者 | 43.1 | 281.3 | 764.0 |
| 娯楽場等接客員 | 39.6 | 274.7 | 328.7 |
| 身の回り世話従事者 | 41.8 | 254.3 | 244.7 |
この表でまず目につくのは、平均年齢が高い区分のほうが月額給与が高い、という単純な関係が成り立っていないことです。デザイナーは平均年齢38.8歳で月額363.8千円、総合事務員は平均年齢44.2歳で月額341.7千円。年齢の重心が5歳以上高い区分のほうが、月額では下回っています。
賞与の側に別の傾向が出る
一方で、年間賞与を見ると印象が変わります。デザイナーの年間賞与は727.5千円で、この表の中では低いほうです。総合事務員は1008.5千円、車掌は1200.9千円。月額では並んでいても、賞与を含めた年間の受け取りでは差がつきます。
賞与は勤続年数や企業規模に左右されやすい部分です。デザイナー区分の平均年齢が38.8歳と若めであることと、賞与が控えめであることは、同じ背景を見ている可能性があります。ただしこれは表の数字から読める範囲の推論で、素材のデータそのものが年齢と賞与の関係を示しているわけではありません。
同じ「デザイナー」区分でも仕事の中身は違う
[デザイナー区分の賃金](/wage/w1224.html)には、幅広い職業がまとめて含まれています。[Webデザイナー(Web制作会社)](/job/webdezainaa.html)、[グラフィックデザイナー](/job/gurafikkudezainaa.html)、[インダストリアルデザイナー](/job/indasutoriarudezainaa.html)、[ファッションデザイナー](/job/fasshondezainaa.html)、[インテリアデザイナー](/job/interiadezainaa.html)、[ジュエリーデザイナー](/job/jueriidezainaa.html)、[テキスタイルデザイナー](/job/tekisutairudezainaa.html)、[フラワーデザイナー](/job/furawaadezainaa.html)、[ブックデザイナー](/job/bukkudezainaa.html)、[カラーコーディネーター](/job/karaakoodineetaa.html)、[ディスプレイデザイナー](/job/disupureidezainaa.html)、[CG制作](/job/cgseisaku.html)、[イラストレーター](/job/irasutoreetaa.html)、[広告デザイナー](/job/koukokudezainaa.html)——これらはすべて同じ区分の数字を共有しています。
つまり月額363.8千円、平均年齢38.8歳という値は、この十数職業をまとめた平均です。仕事の中身が違っても数字は同じになるので、「自分の目指す職種の年齢別の相場」をこのデータから直接取り出すことはできません。
デザイン分野でも別区分に入る仕事がある
同じデザイン・クリエイティブ分野でも、賃金区分が別になっている職業があります。
| 職業 | 属する賃金区分 | 平均年齢 | 月額給与(千円) |
|---|---|---|---|
| [舞台美術スタッフ](/job/butaibijutsusutaffu.html\) | 音楽家,舞台芸術家 | 38.4 | 408.0 |
| [商業カメラマン](/job/shougyoukameraman.html\) | 美術家,写真家,映像撮影者 | 38.3 | 371.5 |
| [ナレーター](/job/nareetaa.html\) | 車掌 | 38.0 | 367.2 |
| [放送ディレクター](/job/housoudirekutaa.html\) | 総合事務員 | 44.2 | 341.7 |
| [インテリアコーディネーター](/job/interiakoodineetaa.html\) | 電気機械器具組立従事者 | 43.1 | 281.3 |
| [舞台照明スタッフ](/job/butaishoumeisutaffu.html\) | 娯楽場等接客員 | 39.6 | 274.7 |
| [テクニカルイラストレーター](/job/tekunikaruirasutoreetaa.html\) | 身の回り世話従事者 | 41.8 | 254.3 |
区分名が実際の仕事の呼び名とずれているものもあります。統計上の分類と職業名は別のものだと理解しておくと、数字の読み間違いを避けられます。
平均年齢が最も高いのは放送ディレクターが属する区分(44.2歳)で、月額は341.7千円。平均年齢が最も低いのはナレーターが属する区分(38.0歳)で、月額は367.2千円かつ年間賞与1200.9千円と、この分野で最も賞与が大きい区分です。ここでも「年齢が上がれば賃金も上がる」という直線的な関係は見えません。
地域差は年齢差より大きく出ることがある
デザイナー区分では、月額が高い県は東京都407.2千円、長野県398.9千円、大阪府376.5千円。低い県は青森県232.5千円、熊本県239.0千円、宮崎県240.2千円です。全国平均363.8千円に対して、上と下で170千円以上の開きがあります。
平均年齢の違う職種区分どうしの月額差(表の最大と最小で153.7千円)と比べても、同じ区分内の県による差はそれに近い、あるいはそれ以上の大きさです。年齢を軸に考える前に、どこで働くかのほうが数字に効いている面がある、と読むこともできます。
読むときの前提
ここに挙げた金額はすべて職種区分ごとの平均であり、個々の求人の提示条件ではありません。平均年齢も区分に属する人の平均で、特定の職業や特定の企業の年齢構成を示すものではありません。金額の単位はいずれも千円です。
年齢別の細かい賃金カーブを求めている読者には物足りない結論かもしれません。ただ、公開されている職業情報の粒度は職種区分単位であり、そこから言えることと言えないことの線引きをはっきりさせておくことが、統計を実際の職探しに使うときの出発点になります。
職業情報提供サイト(job tag)/厚生労働省 職業情報データベース(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 作成) 数値系 Ver 7.00/解説系 Ver 7.01(2026年7月30日取得)
賃金構造基本統計調査(厚生労働省)「令和2年以降 一般_都道府県別_職種(特掲)DB」を加工して作成
雇用動向調査 職業別 未充足求人数・欠員率(2021年)
雇用動向調査 職業別 入職・離職者構成比(2017年)
雇用動向調査 現職職業×前職職業 別入職者数(2019年)